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はじめに
目次
8月23日からパッタリと音沙汰のなくなったA’、Analog2.0改造・拡張シンセだけど、細々と続けていてなんとか完成→サミット展示を行うことができた。
いまさら細かい進捗を書いてもしようがないので、出来上がったこのシンセの仕様を説明しよう。
電源
電源は初期の段階から妄想していたものを形にした(「電源完成」)。
はてなグループの終了日を2020年1月31日(金)に決定しました - はてなグループ日記 - 機能変更、お知らせなど
- マイコンを利用したMIDI-CVとEGを載せる予定をしている関係で +5Vが必要になる。主アナログ電源の±12Vを削って+5Vを作るのをなんとなく嫌ってみた。
- ていうか、今回採用したACアダプタが19.5V 2.3A品なんですよ。余裕あるじゃんということで、根元の19.5Vから+5Vを作ることとする。
- ±12Vと+5Vの立ち上げ順序は考えた方がいいかなー。まー、趣味の範疇だし考えなくてもいいだろうとも思うのだけれど、±12Vを繋いでから+5Vを供給するようにしてみるかなー、とか。
- そこまでやるならLEDを光らせるのも±12V系統から電流引かないで、19.5Vから取ればいいだろう
- -19.5V使ってLEDを光らせるようにしようかねぇ
15VのACアダプタから+12Vを作るのはちょっときついかな、と考えてノートパソコン用によくある19.5VのACアダプタを採用した。保護回路回りやグランドパターン回りを自分好みに改修して、Analog2.0基板に一番手を入れたのはこの電源であろう。
19.5Vから5Vにドロップさせると、電流もけっこう引いているものだからそれなりにレギュレータが熱くなった。手持ちのセラミック抵抗さんなどを投入して一部泥をかぶってもらった。
それ以降の部分については、上記のようなところで推移したと言える。0→+5Vの信号を受けて GND~-19.5V でLEDを光らせるようなトランジスタの使い方を練習したりといい勉強になった。リレーのOFF回りはまだ怪しい動作が残っているので勉強は続く。
しかしながら、最後の最後になってMIDI-CVで+6V電源が必要になろうとは電源製作時点では想像できなかった。結局MIDI-CVローカルに+12Vからレギュレータで+6V電源を作った。
遅延制御のリレー回りの回路とかそれ用の-5Vとか、デジタル用の+5Vとその配りんぐコネクタ、LED用の±19.5Vと配りんぐコネクタなどは追加基板に配置した。
VCO
VCO1
VCO1にはtakedaさんによるTB-VCOを採用した。以前ブレッドボードで遊んでいたときから気に入っていていつか使おうと考えていたがそれが5年後になろうとは。
周波数の可変抵抗器には多回転を使用。コントロールをCoarseとFineに分けないで使う。
波形出力はSAW(鋸歯状波)だけを使う。サミット2010でも「VCO1って波形は?」「SAWのみです」という会話が多々。しかしその内部には 鋸歯状波→三角波→正弦波 という変換回路が載っている。水面下の白鳥。最終変化型の正弦波(レベル固定)でVCO2をFMしようというのである。鋸歯状波はそれはそれでVCO2にソフトSYNCをかける。ツマミが3つ、波形はSAWのみに見えるこのVCO1はその実、SYNCマスタであったのである。
VCO2
VCO2にはAnalog2.0のモジュールをそのまま使う。いや、そのままではないな、CVの入力をひとつ増やしている。これはMIDIピッチベンドによる制御をもくろんでのこと。
そしてVCO1からSYNCやLinear FMでつつかれるのだが、これはもともとのAnalog2.0 VCOに用意されている機能である。すばらしい。
MIXER&NG
MIXER
Analog2.0はMIXERとNGがひとつの基板に載っている。筆者が購入したリビジョンではVCO/NG/外部入力のミキシングであるが、A’ではVCOがふたつあるのでそれに応じた改造を行った。可変抵抗器の並びも上からVCO1/VCO2/NG/外部入力 となるようにした。ミキシングのオペアンプにはNJM2114を採用。ミキサなのでオペアンプ回路にドリフト低減用の小細工を入れるべく基板パターンを切った張ったしてみたり。
NG
NG(ノイズジェネレータ)は逆バイアストランジスタを利用した回路である。指定は 2SC3311 だが、個人的にNGで採用実績の多い 2SC828A も試してみた。オシロで見た波形としては 2SC828A のほうが良かった。2SC3311 はひたすらクリップしていたので。しかし音的にはトータルで考えて 2SC3311 のほうが良いと判断してこちらを採用してみた。
Analog2.0ではホワイトノイズとピンクノイズを出力するようになっている(ミキサにはスイッチで切り替えたものをNGチャンネルに入力している)。ここで拡張としてピンクノイズよりもさらに低域の赤ノイズとなるようにフィルタを追加した。小基板になってMIXER&NG基板に親亀小亀している。回路は山下シンセから引っ張ってきた。赤ノイズを波形として出力するつもりはなくて、後述のS&HへのデフォルトCVソースとしようという考えに基づいている。
Sample&Hold
どういうわけだかS&Hは載せなくてはいけないような気がしていた。なぜかは全くわからない。モジュラ・シンセ(Chuckの5Uモジュラ・シンセ) の方にもまだ作っていないというのに…
回路としては山下シンセの回路を使わせていただいた。が、どうしても動かない。オシロを当ててみたらサンプリングパルスが出ていない。2SA733回りがその役を担っているのだが手持ちがなくて2SA1015を使っていた。この回路は2SA733限定なのだろうか? 製作が押し迫っていたこともあり手前に回路追加して何とか動かした。たぶん山下さんの設計想定よりもサンプリングパルスの幅が広いと思う。その分、ブリブリ言うのでとりあえずは良いかと考えて問題は先に送った。
EG
EG1
EG1には Analog2.0 を採用。拡張は一点だけ。アタック期間以外でゲートを立てるよう、End of Attack (or EOA) 信号を出力するように回路追加した。555EGなのでアタック期間の充電信号がどれかはすぐに分かり、そこにデジトラを追加しただけ。
EG2
EG2は新規のオリジナル。ATmega88Pというフラッシュマイコンを利用。
これに取り組む際のコンセプトはふたつ。
チョッパ回路部分でキャパシタの容量、それぞれの抵抗値やマイコンのADコンバータにつなげているADSRの可変抵抗器に負荷をぶら下げて作っている抵抗カーブを決めるのに苦労したが、試行錯誤の上で決めた定数となっている。
EG2もアタック期間以外でゲートが立つ End of Attack (or EOA) 信号を出力する。
EGミキサ
EGを2個作っちゃったのでその割り振りをどうしようかと。VCFはふたつあるがVCAはひとつしかない。VCFにしてもEG1をパッチするかEG2をパッチするか、プリパッチはどうしようかといった問題がでてくる。
ということで EG1 / EG2 / EG1+EG2 を VCF1 と VCA では選択できるようにしてみた。そのためのEGミキサ。単純に足しただけだと制御電圧が大きくなりすぎるのでもちろん値は半分にしてから足している。
VCF
2-VCFである。ふたつのVCFはいずれもプリパッチではMIXER出力を受け取っている。
VCF1
Analog2.0をそのまま使っている。トランジスタラダーですよ。
これまで OTA や ダイオードラダー のフィルタは作っていたのだけれど、実はトランジスタラダーは初めて。ところどころキャパシタの容量を変えたり電解コンデンサ指定のところをタンタルにしているぐらい。あれ、オペアンプはどうしたっけかな。Analog2.0ではTL072を使っていたけれど、4558か2114に変更したかも。忘れている…
VCF2
Yves UssonさんとRJBさんによる Steinerフィルタを使っている。たぶん昔々に IO誌 に載ったことがある回路なのではないかと思うがちょっと自信なし。もう何年も前にtakedaさんに聞かせてもらった(第4回のサミットだという説あり)Steinerフィルタがずっと気になっていて、RJBさんがYves Ussonさんのものの定数を変更したものが演奏しやすそうだということでこれを作ってみた。Analog2.0のVCAに合うように出力を少し絞っているぐらい。
CVのアンチログアンプに 2SC1963 を使ったのだけど、刻印が消えていたために当初ピン配置を間違えていて、トラブルシュートの足を引っ張っていた。
出音は… ムフフっ。みなさん、ぜひ作りましょう。
VCA
これも Analog2.0 のそのまま利用だが、2-VCFに対応するために若干工夫。MN型の可変抵抗器を千石で見つけたので、VCF1 と VCF2 のバランス という形で VCA の入り口の前に挟まっている。2連なので外部入力のゲイン調整にも使えるように変更するべきかもしれない。
MIDI-CV
昨年度の製作はMIDI-CVそのものだったが、今年は機器組み込み型。これまでのMIDI2CV0、MIDI2CV1、MIDI2CV2 *1、MIDI2CV3 での知見を活かし、製作するごとに改定される midi.c をさらにブラッシュアップして、仕様検討時に考えていた内容は盛り込まれている。
最終仕様では 1-Key CV、1-Gate、Velocity、Pitch Bend、Modulation、Expression、MIDI同期パルス*2 (四分/八分/三連符/十六分/三十二分/二分/付点二分/全音符/二小節/三小節/四小節といったあたりに対応)を出力する。ポルタメントのON/OFF、MIDI Start/StopでLED表示・MIDI同期パルスのリセット などにも対応することができた。
Pitch Bend とそれに引きずられて Expression で最高14bitでのPWM出力ができるようにしてあって試してみたが、やはりLPFの特性がいまいちだとよろしいコントロールと成り得ないようだ。現行ではビット数を下げて使っている。ビッチベンドレンジを絞っている今回の使い方では8bitでも問題ないと言える。
内部パッチ
Analog2.0はライフラインケーブルで接続するのが基本になっている。ライフラインには±12V、GND、Key CV、Gate が載ってバス接続されている。自作の追加モジュールもこれに倣ってライフラインケーブルがささるコネクタを装備している。デジタル系のモジュールだけ、ライフラインケーブルの電源線に関してルート変更を行なっているけれども。
MIDI-CVが内蔵なのでKey CVとGateのソースはこのモジュールである。もちろんパネルからインサートできる。
文章で書くと大変なので内部プリパッチの状態を表にしてみたので参照されたい。
ソース | 機能 | 行き先 |
---|---|---|
MIDI-CV | Key CV | VCO1, VCO2, VCF1, VCF2 |
MIDI-CV | Gate | LFO, EG1, EG2 |
MIDI-CV | Velocity | VCF1, VCF2 |
MIDI-CV | Pitch Bend | VCO1, VCO2 |
MIDI-CV | Modulation | VCO2(PWM) |
MIDI-CV | Expression | VCA |
MIDI-CV | MIDI Sync Pulse | S&H(trigger) |
NG | Red noise | S&H(CV) |
LFO | Delayed LFO | VCO1, VCA |
EG1 | Envelope | EG Mixer, VCO1, VCF1, VCA |
EG2 | Envelope | EG Mixer, VCF1, VCF2, VCA |
EG Mixer | Envelope | VCF1, VCA |
内部の配線量もけっこう多い。
スイッチングACアダプタをふたつ内蔵しているのでノイズをばらまきやしないかと心配だったがそれほど気にしなくても良さそうな感じ。気休めにケーブルを捻っておいたのが効いたのであろうか。
パネル・筐体
タカチのSKE型ケースを、本来とは異なるオリエンテーションで使っている。上面に取っ手をつけた。またメイン電源スイッチは裏面に両切りネオンランプ入り品を、上面には±12V と +5V を本当にONするためのスイッチを取り付けている。あ、あと裏面にはMIDI INね。
おわりに
Analog2.0 を膨らませた筆者作 A’シンセサイザ について概説した。手書き走り書きメモな状態のものものあるのでこれらを整理して、いつかどこかで回路図とソースコードを公開したいと考えている。
文中で述べた「EGたくさん」というのものどこかで形にしたい。このシステムではEGが2個だが、それでもカスケードすると山が複数のEG波形を作ることができて楽しい。さらにカスケードするのが楽しみだ。
さっそくいくつか手を入れたい項目が出てきているので、時間を見ながら作業したいと思う。もちろん音楽制作にも投入したい。
さてこのようなシンセシステムを作ることができたのもひとえにAnalog2.0という良質のプラットフォームがあったからである。今回は表面的に改造したに過ぎないが、骨までしゃぶることのできる美味しいプラットフォームだと考える。Ganさんには深く感謝したいと思う。
最後にこれだけは言っておきたい。