電音の工場ブログ

趣味の電子工作を中心としたブログです.音モノの工作が多いです.

復刊希望の話

復刊希望の話

一庵さん呼びかけで、だれにもわかるエフェクター自作&操作術 Ver3.1(ロッキンf 別冊) 復刊リクエスト投票 (以下『自作&操作術』) が立ち上がった。

一庵さんも言及されているように、1970年代から80年代にかけて数冊発行された雑誌別冊である。グループのキーワードにも登録(エフェクター自作&操作術)されているが、どうやら4ないし5種類が発行されたらしい。

この手の80年代エフェクタ本は何種類も出ていたし、筆者の行っていた本屋にはどこも当たり前のように常に在庫があった。いつでも買えると思っていたら、いつのまにか無くなって手に入らないものになってしまった。

復刊リクエストのコメント欄には期待のほどが窺える熱いコメントが多々寄せられている。昨今の海外コピーサイトを消費するだけでない人々がたくさんいらっしゃったわけである。

しかしながら敢えて言えば、一部の方が期待されるほど これさえ読めばエフェクタの設計ができるようになる というものでは、実は、ない。手取り足取りエフェクタ専科というほどでもなく、一般の電気・電子回路の本は取っ付き難いから、という考えだと肩透かしかもしれない*1

もちろん最近の『誰でも本1、2』*2や最近のギタマガ連載*3は言うに及ばず、『自作&操作術』と同時代の書籍;誠文堂新光社の『エフェクター入門』『最新エフェクター入門』*4よりも解説はリッチだったけれども、むしろエフェクタの解説に関しては、同じく立東社から昭和58年に発行された『エフェクター百科』のほうが詳しいし、エフェクタ回路の説明は今年の『トランジスタ技術*5のほうが洗練されている。

もちろん執筆者がたくさんいらして、製作数は多いしバリーションに富んでいる。記事の製作をすべてこなそうなどと思ったら数年はやることが尽きない。しかしそれは昨今のWEBリソースでも同じことが言えるのではなかろうか。それどころかかえって製作記事数は多いし、世界中で誰かしら作っているからフィードバックもあって、適宜修整されていくし、単に追製作するだけならWEBリソースで充分な気がする。

それでも今なお『自作&操作術』が評価を集めるのは、その製作記事の豊富さも然ることながら、終わりのほうにまとめられている「101半導体回路集」にその理由があると考える。

“盗みの美学”“製作のアイディア源”なる副題のついた「101回路集」は、アッテネータから当時流行りのワンボードマイコンTK80を使ったディジタルシーケンサまで、主としてシンセに良く使われる実用回路を網羅している。ギター・ベース用エフェクタ回路は1割ぐらい。記事の雰囲気は、CQ出版社の『実用電子回路ハンドブック』や誠文堂新光社の『エレクトロニクス回路アイデア集』に通ずる*6ものがある(これらにもエフェクタ回路が掲載されていた)が、シンセ・エフェクトに特化して101もの回路をまとめたところが斬新であったと思う。

昨今の海外エフェクタコピーサイト ―それらにしても『Craig Anderton本』か『自作&操作術』に根っこを見るが― を消費するだけの DIYer からの脱却のチャンス。『自作&操作術』の復刊の暁には「101回路集」を読めるリテラシーと消化できる胃袋を得て、現在の構造主義自作エフェクタから、より自由な*7自作へと模索するための一リソースとなり得るのではなかろうか。

筆者も今は『自作&操作術 Ver3.1』は持っていないので、選択肢が多いことは良いことだし、最近の書籍やムックでは代替できないわけで、及ばずながらも投票させていただきました。

実は

実はそれ以外にも復刊リクエストが出ているものもあったりするんだけど、たぶんネットで煽られなかったのでかれこれ何年もスロームーバーなのかもしれない。

第1次自作ブームの終わり間際の『ハンドメイド・プロジェクト』と下火気味だった第2次自作ブームを支えブティックエフェクタ勃興へと繫がった『ハンドメイド・プロジェクトver.2』についても、そのうち語るかも。

*1:この観点では『サウンド・クリエイターのための電気実用講座』の方が合っていると思う。

*2:筆者による書評はこちら:その1その2

*3:記事リストはこちら:id:Chuck:19990205#p1

*4:オーディオ畑の執筆者が多かったと聞かされた。

*5:記事リストはこちら:id:Chuck:19990210

*6:この頃は回路集本が多かったですな。

*7ハモンドケースとか、9V電源命とか、シンセエフェクタは別だよねとか、VGはシンセじゃないんだ、とかいった枠をはめない。