電音の工場ブログ

趣味の電子工作を中心としたブログです.音モノの工作が多いです.

アナログ・マルチエフェクタ

自作エフェクタ・アナログ

[完了] アナログ・マルチエフェクタ

ちょっと前に いくつかのエフェクタと電源やその他の周辺回路 がひとつの箱に収められたものを譲り受けた。不動作品とのことだった。外見はかなりぼろぼろで、ところどころコネクタが無い、ネジが無い。蓋を開けてみると埃だらけ。スパゲッティな配線もあちこちが切れて、プリント基板も宙ぶらりんの状態だった。

しかし、このエフェクタを再生しようと思った。出来上がりのイメージは高中正義 虹伝説ツアー の頃の「MXRのコンパクトなどをラックケースにまとめたアレ」だ (どこかに「コレだっ」って写真ありませんか?)。

さっそく中身を調べると、電源、エフェクタプログラマ、それからエフェクタ基板が7枚。電源とエフェクタ切り替え回路はその昔 ロッキンf に載ったものだとわかった。電源は容量に不安があったのでこれを使うことをやめ、しかし捨てては勿体無いので怪しい部品を交換した上で別箱に収めて実験用電源とした。エフェクタプログラマは生きているような予感はあったが、他に使いたいものがあったので再生は諦め、欲しいと言う人があったので譲った。エフェクタはその基板が何であるか調べるところから始めた。型番の書いてあったものはすぐわかったが、そうでないものはメーカーに問い合わせたり、ネットで情報を集めた。

バラックで7枚の基板を順に動作チェックしたところ全部生きていた。不通電期間中での取り扱われ方によってはBBDが壊れていても不思議ではない。ラッキーだったと言える。VRガリっているものもいくつかあったがとりあえずそのままとし、コンデンサは電源系の危なさそう(主観)なものと信号系をいくつか交換、ケーブルはシールドに交換した。

このときには、もともとあった7つのエフェクタに手持ちの BIAS アナログディレイ を加えて 8エフェクトマルチ にする欲求を抑えきれなくなっていた。ディレイも入れておくとマルチとしてコンクリートなモノになるような気がしたから。個人的にはフェイザーを多用するので入れたいと思ったけれど、そうするとケースにうまく収まらなくなるのは明白だった。残念だがフェイザーは別のプラットフォームに載せることにしよう。

電源は新規に作り直した。トランスに余裕を持たせて 2系統電源とした。ひとつはレギュレータICでコンプ、歪、オクターバを担当させ、もうひとつは揺れモノ系に、回路の勉強を兼ねてディスクリートで組んでみた。揺れモノLFO信号が電源をゆすることを多少なりとも抑えられれば良い。

実は一番苦労したのはケースの加工だった。2Uのラックマウント型ケースに収めることにしたのだが、フロントパネルが3mm厚である。アルミだったがそれなりに苦労した。穴あけ後にレタリングをして保護用ラッカーを吹いて、週末ホビイストのケースの加工は、設計から塗装まで、ゆうに2ヶ月を要する作業だった。ケース加工後はほぼ週末ごとに1台、また1台と箱入れしていった。先に触れたコンデンサ、シールドの交換を行った。さらなる2ヶ月ちょっとをかけて出来あがったのがコレ↓ 冒頭の写真を拡大したものだ。

高中正義 虹伝説ツアー のラックのイメージからは遠い。JIS規格ラックはうちではマウントできないからEIA規格にしたのは当然としても、作っているうちに黒パネルは嫌になってアルミのヘアラインをそのまんま活かしたくなってしまったんで‥ On/Offインジケータにははやりの青色発光ダイオードをおごってみた(ミーハー)。1個150円もして高かった。あ、写真を撮ったときにツマミがひとつはずれていたようだ。

内部のエフェクトのプリ・パッチは 前8回で語った順番になっている。昔からの定番順序である。あとはオートワウフェイザーとリバーブが欲しいところだが、今回は割愛。オーバードライブとディストーションについては、いつもこの順序なので悩まなかった。コーラスフランジャーの順序を悩んだが、考えてみればコーラスフランジャを同時に使うことがあまりなさげなので、適当に決めた。プリ・パッチがこの順序なのだけであって、外部でパッチケーブルを使えば順番の入れ替えはできるからだ。

そうそう、各エフェクターの双安定マルチバイブレータによるon/off回路の挿げ替えも併せて行った。これは、通常のコンパクトエフェクタではモメンタリスイッチでOn/OffがトグルするようになっているものをオルタネートスイッチでスイッチがOnのときはエフェクトON、OffのときはOffとなるようにしたかったためである。使うスイッチは何のことは無い BOSS の FS-5L を8個ほど用意すればよい。自作も可である。FS-5U ではないところがポイント。この変更をしておくことで、マイクロプロセッサを使ったエフェクト・プログラマによる外部コントロールを容易に導入できる。実はMIDI制御で今回のアナログマルチの各モジュールのON/OFFをコントロールするプログラマーも回路設計済みである。ただ、しばらくケース加工をしたくないので完成までは遠い。進捗をこのブログでもそのうち紹介したい。

後学のために加工前の姿を掲載しておこうと思う。

加工前の姿

長い年月を経た姿であった。前作業者の労苦が偲ばれる。

さて、長々書いてきたが、久しぶりにコンクリートなものを組んだ。まだスイッチが無いのでライブで使いにくいじゃないか、という指摘もあるがそれはそれ、これはこれで別箱である。ちゃんとインターフェースしておけば誰かがやってくれる(かもしれない)。


これで 作っていたエフェクタ完成! に始まる一連のシリーズは完了です。次からはまたしばらく開発進捗ログに戻ります。

Chuckのアナログ・マルチエフェクタ